研究・技術開発紹介

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2020年8月31日

「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法および施工方法」の構造性能評価を取得

「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法および施工方法」は、現場打ちまたはハーフプレキャスト部材において、断面の上部と下部で強度が異なるコンクリートを使用する梁の設計・施工時に、梁上部とスラブのコンクリートを同じ強度で打設できる工法です。本工法は、総合建設会社6社(淺沼組、奥村組、熊谷組、五洋建設、鉄建建設、矢作建設工業)で共同開発し、日本ERI株式会社の構造性能評価を取得しました。

開発の背景

鉄筋コンクリート造(以下、RC造)のプレキャスト梁は、梁の下部をプレキャスト(PCa)化し、梁の上部コンクリートを現場打ちとするケースが一般的です。梁とスラブのコンクリート強度が異なる場合、従来技術では下図に示すようにいくつかのステップを踏むため、現場において多くの時間と労力を費やしています。

従来工法と本工法比較の図(pptから)

施工手順(文)

 本工法を採用することにより、梁の上部とスラブを同じコンクリート強度で一度に打設することが可能となります。施工手順の①から③を省くことができ、『施工の合理化、生産性の向上』が期待できます。なお、柱と梁・スラブのコンクリート強度が異なる場合は、柱梁接合部で従来通りの打ち分けが必要となります。

設計施工指針の概要

(1)適用範囲

・片側もしくは両側にスラブが取り付く梁を対象とする。
スラブは0.1L0(L0:梁の内法スパン)以上の幅を有し、厚さは梁せいの0.19倍以上とする。
・梁上部のコンクリート高さ(梁下部より低い強度の部分)は、梁せいに対して1/2以下の高さとする。
・梁上部のコンクリート設計基準強度は、梁下部に対して1/2以上とする。
・本工法は、梁プレキャスト工法と現場打設工法のいずれにも適用できる。

適用範囲

(2)使用材料

先行技術との差別化を図るために、梁の主筋として使える鉄筋をJIS G 3112で定める範囲(SD295~SD490)に加え、大臣認定品である590N/mm2級も適用できるもの。また、せん断補強筋も大臣認定品である1,275N/mm2級まで使用可能。梁のコンクリート設計基準強度の範囲は、Fc24N/mm2からFc60N/mm2である。

(3)設計法

異なる強度のコンクリートが同一梁断面内に存するため、設計時のコンクリート強度として「等価平均強度」という考え方を導入した。この等価平均強度を用いて、許容応力度設計と終局強度設計を行う。
等価平均強度とは、スラブが存することによる効果と異種強度コンクリートが混在する影響を同時に考慮した強度である。この等価平均強度に基づいて算定された梁のせん断終局強度(塑性理論式、荒川mean式)が、自社データと先行他社データを安全側に評価できることを確認し、設計指針に取り纏めた。

今後の展開

今後、共同研究各社において設計施工物件を主としたRC建物に採用し、施工の合理化、生産性の向上を進める予定です。また、必要に応じて本工法の改良についても検討します。

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