研究・技術開発紹介

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2018年12月27日

省エネルギー設計支援を目的とした「ZEB評価ツール」を共同開発※1

~設計段階での省エネルギー効果の評価が可能に~

背 景

石油危機以降、わが国の最終エネルギー消費は増加傾向にあり、徹底的な省エネルギーが課題となっています。そこで、室内外の環境品質を低下させることなく、大幅な省エネを実現するZEB※2が注目されています。2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、「建築物については、2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物での平均でZEBを目指す」とする政策目標が設定されました。

ZEBを目指した設計を行う場合、個々の技術を適用した時の省エネルギー効果を事前に評価することが必要ですが、これまで使用されていた「エネルギー消費性能計算プログラム※3」では、より高度な省エネルギー技術の導入に対して、評価できる種類に制約がありました。高度な省エネルギー技術の評価が可能なツールは他にも見られますが、限られた設計期間で実務設計者が活用していくには、操作に対する専門知識や利用制限等の課題もあり、ZEBを評価する環境が十分とは言えませんでした。 そこで、設計段階での省エネルギー効果の評価が可能で、かつ実務設計者が利用しやすいツールの必要性が高まることを想定し、「ZEB評価ツール」を開発しました。

 

省エネルギー設計支援を目的とした「ZEB評価ツール」

  • 空調用一次エネルギー消費量計算には、多くの熱負荷計算のベースに採用され定評のあるHASPプログラム※4を採用

  • ZEBに有効で先進的技術とされる「ダブルスキン」、「自然換気」、「地中熱利用」等の空調の省エネルギー評価が可能

  • ZEB評価の対象となっている消費設備(空調、換気、照明、給湯、昇降機)について「年間一次エネルギー消費量」の算出が可能

  • 建築物省エネ法※5で定められた性能判断基準である「BEI※6」を算出可能

  • 複数の設計案の評価結果についてグラフ描画、比較が可能

  • ZEBの達成度合いを評価できる「ZEBチャート※7」の自動描画が可能

 

今後は、さらに操作性の改善や評価できる省エネルギー技術数の充実を図るシステム開発を継続し、同ツールを顧客への提案に活用していくことで、ZEB化を積極的に推進します。

 

※1 共同開発:青木あすなろ建設株式会社、株式会社錢高組、東亜建設工業株式会社、西松建設株式会社、三井住友建設株式会社、当社の6社によるもの。

※2 ZEB(Net Zero Energy Building):年間一次エネルギー消費が正味(ネット)で概ねゼロとなる建築物。日本ではZEBの概念が拡張されており、太陽光発電などによる創エネルギー以外の省エネ効果によって、省エネ基準に対して50%以上の削減性能を持つ建築物を指す。

※3 エネルギー消費性能計算プログラム:(国研)建築研究所(協力:国土交通省国土技術政策研究所)が公開し、設計段階における建物の年間一次エネルギー消費量を算出するプログラム。

※4 HASPプログラム:(一社)建築設備技術者協会が提供する、動的熱負荷・空調システム計算プログラム。建築空間の室温・室湿度や熱負荷を算出するとともに、空調に係るエネルギー消費量を評価する。参照http://www.jabmee.or.jp/hasp/

※5 建築物省エネ法:「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号)」

※6 BEI(Building Energy Index):設計した建物の省エネ性能を表す指標。[設計一次エネルギー消費量]÷[基準一次エネルギー消費量]で算出され、値が小さいほど建物の省エネルギー性能が高いと判断される。

※7 ZEBチャート:「ZEBチャート」出力表示例

ZEBチャート

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