研究・技術開発紹介
最新の研究
2018年12月17日
桟橋の調査診断システムを開発 -ICT,画像処理技術を駆使して桟橋の維持管理に貢献-
背 景
従来の桟橋の調査は、3名程度の調査人員が小型船に乗り込み、潮位の影響で調査時間が制限される中、船上から観察して写真撮影やスケッチ図を作成して劣化状態を把握し、劣化度の診断は専門技術者が写真やスケッチ図を見ながら判定を行う方法が一般的でした。このため、調査の際の技術者や小型船舶の確保、施設供用や外力条件の制約、客観的点検データの蓄積方法などに課題がありました。
桟橋の調査診断システム
桟橋の調査診断システムは、i-Boat(無線LANボート)で取得した桟橋下面の画像を画像解析により3次元モデルに構築し、劣化度を診断するシステムです。
(1)i-Boat(無線LANボート)による点検
i-Boat(無線LANボート)は、全長が2.2mであり、遠隔から無線にて操船と撮影用カメラの操作が可能です。撮影用カメラには高性能のジンバル(動揺抑制装置)を搭載し、波浪によるカメラの動揺を抑制して安定した画像の取得が可能です。
i-Boat(無線LANボート)
(2)3次元モデル構築ならびに劣化度自動診断
撮影した画像から、SfM/MVS (Structure from Motion/ Multi-View Stereo)技術により、3次元モデル※1が構築され、専用のソフトウエアを用いることでひび割れ密度や剥落面積の有無、鉄筋の露出面積割合などの判定基準をもとに劣化度を自動で診断します。さらに3次元モデル、ひび割れなどを示したCAD図や部材の劣化度の情報を取り込んだCIMモデル※2とすることができ、維持管理データとして蓄積することが可能です。
劣化診断のフロー
本システムの特徴
① 安全性が確保された調査
桟橋下面に調査人員が立ち入らないため、夜間や狭隘な場所でも安全に調査・診断が可能。また、供用中の構造物でも実施可能。
② 従来調査よりも高い作業効率
波浪や潮汐の影響を受けにくく、人員による調査に比べ2.5倍の速度で調査が可能。
③ 劣化箇所の詳細な把握
画像の3次元モデル化により、劣化位置を的確に特定することが可能。
④ 客観的な劣化度診断
専用の劣化診断ソフトにより、劣化度を自動で診断することができ、客観的に診断可能。
⑤継続的な維持管理が可能
定期的な調査データを管理でき、劣化の経時変化を容易に比較可能。
今後は、本システムの積極的な展開を図るとともに従来の専門技術者に頼らざるを得なかった様々な維持管理プロセスについて、本システムなどのICTを積極的に活用して、施工の省力化と顧客に対する効率的な維持管理の提案を行います。
なお、本開発は内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術」(管理法人:NEDO)に採択され研究・開発したものです。
※1:対象とする構造物等の形状を3次元で立体的に表現した情報、「国土交通省:CIMガイドライン」
※2:対象とする構造物等の形状を3次元で表現した「3次元モデル」と「属性情報」を組み合わせたものを指す、「国土交通省:CIMガイドライン」