研究・技術開発紹介
桟橋上部工のオールプレキャスト技術
桟橋の上部工は潮位や波浪などの海象条件の影響を受けながら、足場・型枠支保・鉄筋組立・コンクリート打設といった一連の海上作業を繰り返して構築します。このため、上部工をプレキャスト化することで、海上作業の大幅な省力化が図れ、品質向上や安全性確保のほか、工期短縮や人材不足の解消といった多くのメリットが期待できます。ここでは、プレキャスト技術を構成する杭頭接合および部材接合について紹介します。
杭頭接合①「鞘管方式」※1
プレキャスト上部工にあらかじめ鞘管を埋設し、鞘管内に鋼管杭を所定の長さまで差し込み、その間隙を無収縮モルタルを充填し一体化する方法です。従来の現場打ち上部工と比較して、以下の特徴があります。
・杭頭部の剛結度が1.6 倍に向上
・型枠支保工が不要となり施工を省力化
・工期を約30~50% 短縮
杭頭接合②「孔あき鉄筋定着鋼板方式」
孔あき鉄筋定着鋼板を埋設したプレキャスト上部工を鋼管杭に架設したのち、円形に配置された鋼板の孔に中詰補強鉄筋を差し込み、杭頭部全体に中詰コンクリ ートを打設し一体化する方法です。従来の現場打ち上部工と比較して、以下の特徴があります。
・鋼管杭の挿入長が短く鋼材コストを削減
・型枠支保工が不要となり施工を省力化
・工期を約30~50% 短縮
部材接合「ダブルスクエア継手」※2
梁部材端面からコ字筋を突出させ、コ字筋同士に離隔を設けて設置したのち、コ字筋と接するようにスクエア筋を上方から挿入し、せん断補強筋をスライドさせてコンクリートを打設する継手方法です。従来の継手方法と比較して、以下の特徴があります。
・架設時に鉄筋が干渉しない
・埋設型枠の設置が容易となり施工を省力化
・現場打ち幅を40% 縮小
開発者のコメント
海上工事のプレキャスト化はメリットが多く、省力化に欠かせない施工方法となっております。プレキャスト化には接合部の性能を評価する必要があり、大型の構造実験および数値解析を通して、より良い構造を提案していきたいと思います。
実績
・博多港(中央ふ頭地区)岸壁改良工事
・青森港本港地区岸壁(-10m)(改良)上部外工事
ほか 多数実績あり
受賞歴
令和元年度「日本港湾協会論文賞」受賞(※1)
共同研究
本技術は、東京工業大学、(国研)海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所と五洋建設(株)との共同開発です(※1,2)。