研究・技術開発紹介
建物を守る!浸透固化処理工法
地震の液状化被害から建物を守る「浸透固化処理工法」をご紹介します。
液状化とは
液状化の被害(東日本大震災後)
地震が発生すると、地盤に水平方向の繰返しせん断力が加わり、土粒子同士の結びつきが徐々にはずれバラバラとなり、液体の様になることを液状化といいます。このとき、土粒子の有効応力は、間隙水によって受け持たれるため、間隙水圧が上昇します。地震後、徐々に排水され間隙水圧が消散することで、土粒子が再配列され地盤が沈下します。液状化地盤上に建設された構造物は、地盤の支持力がなくなるため、大きく倒壊します。
浸透固化処理工法
浸透固化処理工法は、液状化が予想される地盤内に溶液型の恒久薬液を低圧力で注入することにより地盤を低強度固化し、液状化を防止する地盤改良工法です。浸透性の高い薬液を低圧力で地盤内に注入することにより、土粒子骨格を壊すことなく間隙水を薬液に置き換えます。そのため、周辺構造物に影響を与えず、施設を稼働しながら施工することができます。使用する薬液は、従来の水ガラスから劣化成分を除去した恒久薬液であるため、長期的に劣化することがありません。
浸透固化処理工法の施工方法はこちらからご覧いただけます
供用しながら液状化対策工事が可能に
空港での施工風景
空港施設や港湾施設は、地震発生直後でも使用が求められる重要構造物であるため、液状化による被害を防止しなければなりません。しかし、液状化対策工事のために日々の施設の利用を止めるのは困難であることから、供用しながら工事可能な浸透固化処理工法が開発・適用されるようになりました。
また、貯蔵タンク等の既設構造物直下地盤に対しては、施設近傍からの斜削孔や曲がり削孔を併用した施工が可能です。
曲がり削孔による浸透固化処理工法の施工映像はこちらからご覧いただけます
2013年には従来工法を改良したシェル型浸透固化を開発しました。本技術により、従来の浸透固化処理工法を性能はそのままで、安価に施工可能となりました。
シェル型浸透固化処理工法のイメージ(左)と施工後の改良体(右)
開発担当者からのコメント
浸透固化処理工法は、世界ではじめて開発した液状化対策用の薬液注入工法です。地震が多い我が国において、1つでも多くの既設構造物を液状化から守りたいと思っています。
実績
東京国際空港新B滑走路地盤改良等工事
新千歳空港 滑走路耐震対策工事
福井港海岸(福井地区)護岸(改良)地盤改良工事 ほか 多数実績あり
特許・評価証
当工法は(独)港湾空港技術研究所と五洋建設(株)の共同開発です。
(財)国土技術研究センター、(財)沿岸技術研究センター主催 第3回国土技術開発賞 優秀賞受賞(2001)
地盤工学会賞(技術開発賞)受賞(2003)
地盤工学会九州支部 技術賞受賞(2004)
旧運輸省民間技術 評価証 第99111号(1999)